033 社長の我慢は仕事への矜持。

「社長が現場にあまり来ないことでしょうかねー」

離職率30%と言われる某業界で、5%の数字を誇る成長企業の現場担当者さんに離職率の低さの理由をうかがう機会がありました。その時の返事が上記の言葉です。

担当者さんは半ばジョーク混じりで答えてくださったのですが、これは真理をついているのではないかと。トップがずーーっと現場に張り付いてあーだこーだと指示というよりは文句を連発し、管理という名の監視でただでさえ忙しくて大変な現場がさらに疲弊していることはよくありますので。

メンドくさい社長が来ないから現場がのびのびできるのかもしれませんが、これは決して現場放棄している訳ではなく、逆にむしろ物凄くしっかり管理されているということ。この会社では、社長さんが時々しっかりネジを巻くかのように厳しく指導されている姿を見受けることが。それにしても社員さんの自然でにこやかな笑顔が目立つ現場です。社員さんは社長さんから任されている、信頼されているという喜びを持って仕事されているに違いありません。

思い付きのような指示を朝令暮改のごとくバンバン出されても社員さんはイヤになります。朝令暮改は当たり前だと開き直るのは、結局は計画能力のなさのようなものではないかと。現場のことを熟考し、しっかりとしたプランが出来ているからこそ必要最低限の指示で部下が動いて成果を出すのでしょう。仮に例え本当は社員さんを信頼していないにしても、それは態度に出さず我慢して信頼しているかのごとく振舞って社員さんのモチベーションを上げ、それが最終的には信頼にもつながっていく。そのように管理されているということなのです。それこそが、この社長さんの仕事に対する矜持なのでしょう。

「社長がヒマな会社はよく儲かっている」などと言いますが、こういうことなのかもしれません。ちなみにこの会社の社長さん、本当はヒマを持て余しているどころか空いた時間は会社を良くするため、そして社員さんのポテンシャルを高めて引き出すために東奔西走。頑張る社長さんの後ろ姿を、やはり社員さんはしっかり見ておられるということです。

ヒントルームLABO 代表・岡橋秀樹
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